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2018. 6. 22

第四章 聖剣の生まれし地

前回、桜ヶ池レベルアップイベントを決定した私は、

参加特典を求めて、木彫り師達の住むイナミの地を訪れた。

この木彫りで出来た聖剣を持つものは、イナミの地において竜の御心を伺う事が出来るらしいと攻略サイトで読んだからだ。

ソ「イナミの竜神よ。我こそは聖剣をもつ見習い勇者である。姿を現されよ」

竜「聖剣をもつ勇者だと…人間の分際で小賢しい」

ソ「竜神様、そうおっしゃらず、良い知恵を授けて下さらぬか」

竜「七つの竜玉はどうしたのだ…」

ソ「え…ちょっと世界観が違うと申しますか…それは触れると危険なネタかと…」

竜「玉が無いものに知恵はやれん!!この玉無しめがぁぁぁぁぁ!」

ソ「…」

 

ネットの情報を鵜呑みにしてはならないと感じつつ、

失意の中、帰宅の途につく私に、一人の男が声をかけてきた。

 

男「これ、そこの旅人よ。その腰の剣はもしや聖剣ではあるまいか」

ソ「はい、そうっすけど」

男「近くで見せてはくれんか」

男「勇者よ!この剣を竜神様に届けられたと。これは…いいものだ!!」

ソ「マジっすか?会社の裏にあったの引き抜いただけなんですけど」

男「竜神様が何と仰ったのか聞きたい。上がっていかれよ」

男「そうか…七つのドラゴンボー…」

ソ「違います。あくまでも七つの竜玉です。ドラゴンなボールではありません。てかそんなものこの世界に無いです」

男「そもそも、竜神様に何を聞こうとなされたのだ?」

桜ヶ池の桜を救うべく、レベルアップクエストを始めること。

そして、その為には更なる仲間達を集め“夜明けのギルド”を結成したいのだが、

せっかく集まってもらうのに、何か良い特典が無いかを探している旨を話した。

男「話は分かった。ここで会ったのも何かの縁。ひと肌脱ごうではないか」

ソ「あざっす!でも、おじさん木彫り師ですよね?」

男「おうよ。木で出来たギルド証なんかどうかね?あんたが首にかけておる、カードぐらいのサイズのもので」

ソ「木で出来たギルド証…なにそれっ!超カッコいい。でも…」

男「なんじゃ?」

ソ「…お高いんでしょ?イナミは日本遺産にもなっている彫刻の里だ」

男「確かにワシが彫ればな」

ソ「無理だ…駆け出しの見習い勇者の俺では、こんなゴールドを払えない…」

男「と、そんな悩める勇者さんに今回紹介するのがこちら!」

男「木彫りの欄間も大切ですけど、時代は日々進化しておるんです。木をセットしてぽちっとな」

ソ「うぉおおおおおおおおおお、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ」

 

わずか2分ほどの出来事だった。まるで紙に印刷するかのように、レーザーが木を彫っていく…いや木を焼いているという表現の方が正しいのかもしれない。

男「こいつを使えば、20人分ぐらいなら何とかなる。どうです、勇者さん?」

ソ「…」

あまりの衝撃に言葉が出なかった。しかし、次の瞬間、私の体は動いていた。

ソ「おじさんも今日から俺たちの仲間だ!!一緒にやっていこうぜ!!」

男「こりゃたまげた。こんなおっさんでいいんかえ?」

ソ「どうせ元からおっさんしかいないんだ。おっさんが1人増えたところで構うもんか」

男「なんかわかんねぇが、まぁいいか。ワシの名はニシムラ。シムラーと呼んでくれ」

ソ「お、おう…」

 

シムラーが なかまに くわわった

 

シ「いとしいしと…」

ソ「あげないよ」

こうしてまた新たな仲間を加えた私は、クエストの準備へと突き進むのであった。

 

次回

本格的な冒険を前に村長へと挨拶に行く事になった五人。

果たして、公務員のみなさんに我々の姿はどう映るのだろうか。