第四十七章 ある日の日常
勇者ソーマたちが暮らすこの世界では、今大変な事が起きている。
雑木や魔王を倒す前に、新型コロナウイルスという新たな敵キャラが登場したのだ。
こいつは、いきなり出てきたのにも関わらず、お前、ラスボスかよ?というぐらい強く、
下っ端勇者である我々には手も足も出ない存在である。
ソ「え~、では第四十七回勇者定例会議始めます~」
サ「相馬さん、マスクしてくださいよ」
ソ「マスク売ってないんだもん…」
サ「そういう人がウイルスを蔓延させるんでしょ!」
ソ「わかったよ、次からするよ…」
サコディは職業上、食品も扱っているので非常に厳しい。
まぁ、このご時世なので当たり前なのだが、なかなか習慣にならない。
ナ「サコディ、そんなに不安なんやったらテレワークで参加すればええやん」
サ「していいならしますよ。じゃあ、次回からはテレワークで参加させてもらいますね」
ソ「空間通信機な」
ナ「へ?」
ソ「空間通信機。世界観壊さずいこうぜ」
ナ「どっちゃでもええわ」
既にお気づきの方もいるだろうが、この場に森の人改め街の人はいない。
彼は何とか人生に迷わず、ジョブチェンジに成功し、街に移住して新しい生活をスタートさせたのだ。
ナ「街の人、聞こえるー?」
街「聞こえるよー」
ソ「街の人は箱の中に住んでるのか?」
街「??」
ナ「気にせんといて。いつもの世界観話やから」
この空間通信機こそ、現状、新型コロナウイルスに人類が対抗しうる最大の武器だ。
どれだけ遠方に居ても、瞬時に話せるという優れものだ。
ソ「新しいジョブどうなん?」
街「ん~ずっと森にいたから、まだ街の生活に慣れんな」
ソ「新しい雇い主の連絡先ってあるの?」
街「連絡先?総合受付のメールアドレスならあるけど」
ソ「OK。勇tubeのURL添付して送っておくわ」
街「やめろバカ!!」
そんなこんなで街の人も引き続き、勇者としては活動してくれる事になっている。
ソ「さて、今日は返礼品について話し合うか」
ヨ「蛮族のノコギリについては、来週もう1回打合せしてきます」
ソ「蛮族のノコギリもだけど、少額の返礼品何にしよう?今年はこの状況だから、現地に来る人は減るだろうから、出来るだけネット募金頼りになると思うんだよね。そんな人でも、手軽にポチれるものが良い」
サ「その事なんですが、一つ提案が。車に貼れるオリジナルステッカーとかどうでしょう?」
サ「ステッカーならこれまで何回も作ってるんでノウハウあるし、コストも抑えつつ大量に作れますよ」
ソ「なるほど。オリジナルステッカーか…どんなデザインがいいんだろう?」
サ「こんなんどうです?」
ソ「これは何というか…いいのか、これで?」
サ「勇者が作ったドットキャラとか、これまで勇者達が発した名言的なものとか入れて」
ソ「これ何よ?サコディの言葉か?」
サ「めっちゃソーマさんが言ってた言葉じゃないですか!」
ソ「俺、こんな事言ってねーよ!絶対、金からみはサコディだろ!」
サ「僕がこんな事言う訳ないじゃないですか」
ナ「どっちゃでもええ」
ヨ「桜ケ池クエストのイメージが…」
本当にこんなので良いのか不安になった私は、あのお方に聞いてみることにした。
ソ「狐の娘よ。これ見てどう思う」
キ「ない。」
ハッ。仰せのままに。
という事で、ステッカーはいいけどデザインは全見直しとなった。
ソ「あ、あと、はじまりの木の移転場所ってどうなりそう?」
サ「今、ソーマさんから指定された例の場所を活用できないかどうか、市に確認中です」
ソ「使えるといいな~鉄〇DASH風の開拓やりたいんだよね」
ナ「あそこ使えたら、マジで開拓になるよな」
ソ「そうなったら、ヨシュア、お前にあの地は任せるからな」
ヨ「えっ、自分がやるんですか?」
もう我々ロートル勇者は桜ヶ池の整備だけで手一杯なのだ。
この上、開拓などやる余裕はない。なので若手勇者候補であるヨシュアにこの地の運営を任せようと思っている。
ソ「1人で不安なら、自分で仲間を集めるんだ。俺がやったように」
ヨ「誰に声かければいいんでしょうか?」
ソ「そんなもん、自分で探せ!甘えるな!!」
街(声)「ヨシュア君、パワハラ上司が辛かったら辞めてええんやで」
ヨ「まぁ、とりあえず探してみます」
ソ「あと、開拓するにしてもどんな事がやりたいかある程度決めておかないと」
ヨ「あ、それはもういくつかあって…」
ソ「お前…マジで言ってるのか?俺は知らんぞ」
ヨ「ただの希望ですよ。出来るかは分かりません…」
ナ「このホワイトボードに書かれたことは実現せなアカンくなるらしいで」
ヨ「えっ…」
ソ「これは、お前の物語だ。頑張って開拓日誌書いてね」
その後の会議で、以下の事が決まった。
・はじまりの木の移植予定は5月末で調整する(可能なら5月23日or24日)
・それに合わせて第3期返礼品を開始し、ネット募金を開ける
・それに合わせて約束の地の開拓を開始する。
・開拓日誌を月1回は書く。
ソ「じゃあ、今日は以上かな」
サ「そういえば、このステッカーのリデザインってどうします?」
ソ「あ~……狐の娘がやってくれるって!」
キ「また図ったな^^」
いつか、私は狐の娘に抹殺されるかもしれない。
次回
返礼品の進捗を確認するソーマとヨシュア。
果たして蛮族のノコギリはどこまで完成しているのか?