第十八章 ヴィーナスのささやき
ソ「ん~~~~~~~~~~~~~~~」
その日、見習い勇者は悩んでいた。
サ「どうするんですか?早く決めて下さい」
だって悩むんだもん。
サ「普通に黒でいいじゃないですか。それか白か」
ソ「白はやだよ。速攻でカレーこぼして黄色くなるのが目に見えてる」
そもそも、事の発端は森の人が言い出した「???アイテム」である。
次回イベントに合わせて、何か新規アイテムを作れないか?という話だったのだが、
結局、何度か話し合った結果、「スタッフTシャツ」という、さほど驚きも無いものに決まった。全然斜め上じゃないが、仕方ない。
だって、会議前に某24時間な番組を見てしまった以上、影響を受けない訳がないのだ。
Tシャツの柄はすぐに決まった。ギルド証にも刻印されている、あいけろさんが書き下ろしてくれた夜明けのギルド団マークである。
ちなみに、長老ホーリーからは「よそ者、若者、ばか者」の文字がでっかく載ったTシャツが良いな~と、丑松のようなメールがきていたので、見なかった事にしておく。
そんなこんなで、Tシャツ業者のカワテンさんとの打ち合わせ日を迎えたわけだが、森の人は別件で来れなくなった為、私とサコディの2人で対応することに。
※要チェック→(株)カワテン https://www.oreno-shop.co.jp/
ここで、はっきり言っておく。
こんなおっさん2人に色彩やデザインセンスなんかある訳ないだろう。
仮に森の人が来れていたとしても、おっさんが3人になるだけで何も解決しない。
Tシャツなんか、黒と白しか持ってねーよ。他の色、買おうと思った事もない。
カ「例えばですね、ターコイズブルーにメイズを合わせてみたりとか、インディゴみたいな深い色も合うと思うんですね」
ソ「すいません。失礼ですけど、日本語で話してもらわないと困ります。いくら僕らの活動が勇者的世界観だからって、そんなRPGの世界でしか聞かないような言葉じゃわかりません」
カ「えっ…そんなつもりはないんですが…こちらの色見本表を見てもらえばわかります」
ソ「そもそも、タコは赤いでしょうが。ブルーってなんですか、けしからん。メイズは迷路って意味です。インディゴはインディアンとサンディエゴの合いの手的なものですか?」
サ「ソーマさん、絶対、僕らだけじゃ無理ですってこれ…」
その後、色見本というものを渡されて、説明を受けたが、
この世に、青色が10種類あり、黄色が12種類もあることを初めて知った。
こういう時は女性に聞くのが一番だ。ピーエーワークスの総務部を訪ねる。
ソ「山田川(仮)さん~、ちょっとい…」
山「今、忙しいから今度ね」
ソ「…」
総務部の山田川(仮)さんは、男社会に揉まれてきた結果、スルースキルがLv99なので、
ほぼすべての事を、聞く前にスルーしてしまう特異体質の持ち主だ。
なので、話しかけ方にはコツがいる。
ソ「そう言わず、力を貸して欲しい。我らがヴィーナスよ」
山「何?」
返事があった。ヴィーナスと呼ばれるのは悪い気がしないらしい。
ソ「Tシャツ作ってるんですけど、センスがある大人に見て欲しいんです」
山「色とか決めていいの?」
ソ「是非是非」
山「え、黒にしようとしてるの?絶対、夏暑いから止めた方がいいよ」
山「私だったら、下地ロイヤルブルーに絵柄イエローがいいと思うな~」
山「あ~でも、こっちのチャコールとアッシュの組み合わせも悪くないね」
カ「そうですね、サンドカーキなんかも良いかと思います」
早くしないとサコディがお眠です。
山「最終的には、見習い勇者ソーマが決めなよ。私が決めるの変だし」
ソ「えと………じゃあ、黒に白文字で…」
山「はぁ?あんた、私の話聞いてたの?もう1回説明するから、ちゃんと聞いといてよ」
その後、私は、小一時間に渡って、ヴィーナス山田川から「オシャレ」とは何か?についての厳しいレクチャーを受けることになった。こうして、私は新たな能力を授かった。
見習い勇者ソーマは、スキル「オシャレが分かったと思う」を、手に入れた。
ソ「では、このライムとアーミーグリーンの組み合わせと、ライトブルーとターコイズで試作品をお願いします。印刷方法はおすすめのガーメントプリントで試してみましょうか」
カ「わかりました。では、試作品が出来次第お持ちさせて頂きます」
こうして、ヴィーナス山田川の助けも借りて、無事に「桜ヶ池クエストスタッフTシャツ」の発注を完了できた。
尚、このスタッフTシャツは、後日のイベント開催日を皮切りに販売を開始しようと思う。
もちろん、このTシャツの販売収益は、募金同様に桜ヶ池の桜再生の活動資金となる。
みんな、このTシャツをきて、我々と共に桜ヶ池クエストに参加して欲しい。
試作品の完成を待て!
次回、気付いたらもうイベントの1週前じゃん!伐採の準備は?食材は?Tシャツ間に合った?そもそも、参加者何人?