第十章 悪魔バフォメット降臨
私の名は、自遊の森のお兄さん、こと森の人。
見習い勇者ソーマに誘われて、はじまりの木を守護するものである。
そんな私が、今日は主役を務めることになる。
その名も「森の人、はじめてのおつかい 真夏の大冒険」
いつも見習い勇者ソーマばかりがフューチャーされているので、
これを機に主人公の入れ替えを画策しようと思う。
長「ワシ、コレ、ホシイ」
森「ちょ!ダメですって。置いて下さい。食べる気ですか?」
長「むかっ!誰がこんなかわいいもん食うか!」
森「だって、巨人に襲われてるヤギにしか見えないですよ」
我々がどこに来ているかというと、長野県にある産直市場「グリーンファーム」さんである。農産物直売所であるが、動物の飼育販売まで行っている場所だ。
長老ホーリーは、なぜかずっとヤギを欲している。
いつも「ヤギは?ヤギは?」と念仏のように唱えている。
ソーマ君が言うには「たぶん魔法使いだから、儀式の為の生贄用だと思う」との事だが…
長「みてみて、これなんかよくない?」
森「こんどは、そんな可愛いヤギ、食べる気ですか?」
長「だから食べないって。そもそも誰が食べるって言ってるんだ?」
森「見習い勇者ソーマが儀式で生贄として食べる気だと言ってました」
長「あいつ、帰ったら説教やな」
森「…」
ソーマ君、ごめん。
俺はたった今、君を生贄にささげました。
森「そもそも、長老はなんで、そんなにヤギが欲しいんですか?」
長「これから桜ヶ池に人が来てくれるようになるとしてだ、何もいないと寂しいだろ。ここみたいに動物がいれば子供達も楽しいじゃん」
森「でも、それなら別にヤモリとかトカゲとかチュパカブラでも良くないですか?」
長「分かってないなぁ、ヤギは草も食べてくれて除草してくれるんだぞ」
森「本当にそんなに草食べるんですかね…?」
長「なにおう!除草用にヤギ飼ってるところだって一杯あるんだぞ!このヤギを一匹、いや三匹放っておくだけで、草抜きせずとも一帯綺麗になるわ」
森「冬はどうするんです?桜ヶ池のあたり、雪で埋もれますよ」
飼「あ~雪国なの?だったら冬季の預かりも出来ますよ」
長「それだ!それ!」
森「え、そんなレンタルみたいなことできるんですか?」
飼「ええ、さっき仰ってたように、除草用に飼われている地域もあるんですが、年間通しての世話が難しい場合は、期間レンタルもやらせてもらってます」
森「しかも割と安い」
長「もう決まりだな。車に積んでドナドナしよう」
飼「それなら、ちょうどいいのがいますよ」
森「いや、待って待って。今日は無理っすよ」
長「善は急げだ」
飼「おい、お客さんだぞ」
バ「誰やぁ~ワシを呼ぶんわ~1000年ぶりの降臨やで~」
バ「ワシを誰か知っとんのか?あの悪魔バフォメットやでぇ~めぇ~」
長「…かわいくない」
森「しっ!思ってても言わない」
飼「こいつなら無償で譲りますよ。役立たずで全然仕事しないから」
長「バフォメットの仕事とは?」
飼「種つけです」
長「…お、お」
バ「おい、このワシを無償とはどういうこっちゃねん、怒るでしかし!種つけなんか900年前に飽きてやめたわ!べぇ~」
長「ワシ、コッチ、ホシイ」
森「置いて下さい。今日は帰りますよ」
結局「グリーンファーム」さんとも相談し、諸々、受け入れ態勢を整えたのちに、
来年の春頃にヤギをお借りする方向で検討する事となった。
きっと来年の桜の季節には、バフォメットがみなさんを迎えてくれることになるだろう。
一方その頃…
ソ「で、森の人はまた事後報告行動か?」
ナ「さぁ、長老とどっか出かけたらしいですけど」
サ「イベントの反省会やるのにこないとか考えられない!」
キ「まぁまぁ」
次回
イベント反省会&桜ヶ池“食”企画スタート。
君は究極派?至高派?