第三十四章 桜ヶ池クエスト2
怒涛の「FIRE FESTIVAL」も無事に終わり、
すっかり、はじまりの木も青々とした葉をつけた5月。
ちょうど、昨年のキックスタートイベントから1年が経った事になる訳だが、
見習い勇者ソーマから、緊急招集がかかった。
ソ「みんな、お疲れ。今日は一つ提案したいことがある」
森「FIRE FESTIVAL終わったばっかりなんだから、ゆっくりしようよー」
ナ「そうですよ。みんな疲れてるし」
サ「そうだ、そうだー!!」
キ「だるい」
ソ「別に大変な事をしようって訳じゃなくて、ソーカツしようと思って」
森「ソーカツ?」
ナ「総括か」
サ「何を総括するんですか?イベントの総括?」
ソ「違う。この1年の総括」
キ「大変そう…」
ソ「奇跡的に、このおやじ集団+キツネ面のチームで1年持った訳だし、年間活動を見直してみたいのよね」
ナ「それなら、一緒にこないだのイベントの収支の件も含めてやりたいです。ちょと問題もあるので…」
森「ウソやん…問題は聞きたくないんやけど…」
ということで、珍しく真面目な見習い勇者ソーマ発案のもと、この1年の活動を振り返りつつ、
以下の4点について見直しを行ってみた。
①活動の方向性について再確認
②年間スケジュールの見直し
③お金の使い方(桜整備費・クエスト毎の収支・返礼品など)
④長期ビジョン(ビジョン5年,10年,15年,20年,25年)クリア条件
ソ「まずは、活動自体の方向性なんだけど、大きくは2つあると思うのね」
森「桜の木の整備維持と、地域のにぎわい創出かな」
ソ「そう。で、それは変えるつもりないんだけど、課題ってあるかね?」
サ「感じるのは、やはり活動趣旨への認知度が低いって事じゃないですかね」
キ「こないだのイベントも、一般の方も来られてましたけど、活動の内容についてはまったく理解されてなかったです。あと、桜の木の整備活動という割に、エンタメ性が強すぎる気もします。それと前から言ってますけど、なんかクリア目標がないと、整備維持していくにしても、モチベーションが保てないかと」
相変わらず、キツネの娘の容赦ない的確な意見が胸に刺さる。
ナ「あとね…報告しますけど、整備活動の維持費が割と厳しい事になってます」
森「えっ、こないだのイベントでも40万近く集まったんだよね?」
ナ「はい。でも、イベント自体の運営費もあるので、それを引くと半分ぐらいになります」
森「てことは、今年の整備活動に使うと、また減るから…」
ナ「試算してみたけど、このペースでやっていくと、今ある募金を切り崩していっても、3年後に資金は底を尽くと思う」
更に容赦ないナカムラのリアルマネー報告。お金は嘘をつかないとはこのことである。
サ「ソーマさん、この活動25年続けるって言ってましたよね…」
キ「年々ナンバリングを増やしていくって言ってましたけど、桜ヶ池クエスト3でGAMEOVERフラグ」
森「マジかよ…チートとかないの?大富豪が現れるとか」
ナ「そんなんあるか!」
ここで黙っていた見習い勇者ソーマが口を開く。
ソ「…要はさ、お金かけなきゃいいんじゃね?」
キ「どういうことです?」
ソ「認知度が低い問題については、まだ仕方ないと思ってるのね。それでもこの1年で徐々に広がってるし、継続することで理解は広まっていくし、宣伝広報は今年も力入れていこうと思うけど、お金の問題は、これ以上は無理やと思う」
サ「募金自体をやめるってことですか?」
ソ「いや、やめはしないけど、現状で、これ以上沢山集めるのは難しいという意味。こないだのイベント見ればわかるけど、今だって相当心優しい方々に支えてもらってる感があるのに、これ以上、高額の募金を募るのは忍びない」
サ「でも、お金を払っても良いと満足できるような返礼品なら、出したいという意見も出てましたよ」
ソ「それも分かる。でも、その返礼品を作る為に、また予算がかかるし、労力もかかる。今の俺らにその余裕はない」
キ「珍しい…ソーマさんが超まともな意見」
森「出来ればFIRE FESTIVALをやる前に気付いてくれればベストやったけどな…」
ソ「なので、整備活動費自体を見直して、ミニマムでも長期的に続けられる運営に切り替えたい」
サ「確かに、今までは募金を集めて整備は業者さんに頼む。というのが基本的な考えですけど、それを見直せばだいぶ変わるでしょうね」
ソ「でしょ?業者さんに全て任すのではなく、ほとんどの整備を自分達でやればいいんだよ」
森「そっちかい!!!」
ナ「また別の方向に大変になってるし…」
キ「労働好きですね…」
ということで、この議題は以下にまとまった。
☆整備のクリア目標を設定して、段階的に整備していく。
☆お金を集める仕組みを考えるよりも、参加者の満足度を上げることに注力する。
☆地域の方との交流を求める参加者に答えるべく、我々が橋渡し役となる。
ソ「次、年間スケジュールだけど、年4回のクエストはそのままでおk?」
森「おkなんだけど、一つ提案がある。もし自分達で整備する機会を増やすなら、夏のコケ取りと冬の会議はやめたい」
ソ「やめてどうすんの?」
森「変則になるけど、4月は花見でいいけど、7月・9月・11月は作業をしたい」
ナ「冬はなんも出来ないから、雪が降る前に作業する回数を増やすってことか」
森「あと、FIRE FESTIVALも見直したい。規模がデカすぎて労力的に毎年やるのは厳しいかな…」
ソ「ウソやん…楽しかったのに…」
サ「ソーマさんは縛られてただけだからいいけど、我々は大変だったんです!」
ソ「俺だって、縛られてただけちゃうわ!」
森「でも、生ビール隠れて飲んでただろ!」
ナ「規模縮小は賛成かな。さっきも言うたけど、イベントが大きくなればなるほど運営費が上がっていくので、せっかく募金が集まっても、それで半分になってしまっては意味がないので…」
キ「火は起こしたいな…」
ソ「!!!」
キツネの娘の一言によって以下に決定。
☆今年の活動は、7月・9月・11月に変更し、内容も整備要素を強める。
☆春のイベントは継続するが、規模を縮小する。ただ、「火」を囲むコンセプトは変えない。
☆一年かけて処理した雑木を燃やす。などストーリーを作る。
ソ「続いて、お金の状況」
ナカムラよりの説明があったので、以下がざっくりとした内容。
・この1年間の募金総額が約130万円(キックオフイベント80万円、ネット募金15万円、現地募金で35万円)
ソ「現地募金が結構な額いってるね」
サ「PARUSの方で受付してますけど、自分はイベント日に参加出来ないので募金だけでも。という方は多いですね。あと、ほとんどの方が1万円の募金をして下さっています」
キ「不思議なんですけど、この活動って興味を持ってくれてる方の忠誠心がすごいですよね」
ソ「みんな俺のがんばる姿を見て、感動してだな…」
森「ハイハイ」
お金の使い方については、先にも話したので、基本以下の方針で。
☆イベントや返礼品などお金がかかる事の見直し。キャッシュアウトを減らす方策。
☆業者の方へ頼む内容をプロでないと出来ない事に絞り、極力自分たちでやる。
☆募金が無いと活動が維持できない。という仕組みでは無くす。
ソ「では、最後。長期ビジョンについて」
森「この1年やってみてなんだけど、たぶん雑木の整備だけなら5年以内に終わると思うんだよね」
ソ「ウソだー。去年1年でどれぐらい出来たの?」
森「こないだ調べてみたら、大体湖畔一周のうちの1/5だった」
ソ「そんなにやったのか…」
森「もちろん、これから更に奥地へ入っていくと、作業は大変になっていくけどね」
ナ「だったら、まずは5年後までに雑木を全滅させる。で、ええんちゃう?」
キ「まずは、スラ〇ムみたいなもんですね」
ソ「雑木全部倒したら、次は何倒すの?」
森「雑木の次は桜の木かな。桜の木でも枯れてるものもあるし、オーナーの許可をもらった上で、伐採する」
サ「あとは、今回のイベントでもやった植樹すればいいんじゃないでしょうか?」
ナ「減らした分だけ、場所が空くから新しく植えるのはアリじゃない」
ソ「じゃあそれでいこう。で、その次は?」
………
キ「とりあえず10年後まででいいんじゃないですか?先の事は後回しで」
ソ「…そうね」
ということで、10年以内の目標は以下に決定。
☆5年後:今ある桜ヶ池の雑木をすべて切り倒す(本数数えて記録していく)
☆10年後:勇者たちの入れ替え、枯れている桜の木を切り倒し新しい桜の木の植樹を完了する
10年より先の目標は、それまで活動が続いていれば、改めて立てる事になった。
まずは、残り9年を生き残るべく、戦いを続けていこうと思う。
以上で年間総括を終了する!
次回
見習い勇者ソーマが、”見習い”はもう嫌だと言い出した。
長老による最終試験を突破し、勇者ソーマになれるのか?