第三十六章 おばあちゃんと雨
前回、長老より“見習い”を取るための試練を仰せつかった、ソーマ。
クラウドファンディングの為の施策をとの事なのだが…。
ソ「ダメだ…全然思いつかん…」
一体、どんな事をすれば、皆さんが興味を持って喜んで下さるのか。
アニメ作りに関してはプロではあるが、こういった企画は苦手なのである。
ソ「絵本…絵本…と言えば子供…子供と言えば…」
?「そこにいるのはだあれ?」
ソ「?」
雨の中、悩んでいた私にふと声をかけてきたものがいた。
言うまでもなく、極毛玉タヌキである。
ソ「通りすがりの勇者です。ソーマと申します」
極「あら、わたしたち初めて会うの?」
ソ「たぶん、初めてだと思います」
極「やっぱり…そうだと思った。いったい何を悩んでいるの?」
私は、たまたま雨宿りをしていた極毛玉のおばあちゃんに、悩みを相談した。
ソ「おばあちゃん、絵本と言えば子供のイメージなんだけど、間違ってるかな」
極「そんな感じ、そんな感じ」
ソ「そういえば、子供の頃、寝る前に絵本を読み聞かせしてもらったっけ」
極「そうなの。楽しいことを考えて眠るの」
極「私ね、今は目が見えないの。でも、声なら聞こえるのよ。可愛らしい声が」
ソ「可愛らしい声?」
極「その声は“食べちゃいたいほど好きなんだもの”って言ってるわ」
ソ「何のことだかサッパリ分からないな…」
このおばあちゃんタヌキはいったい何を言いたいのだろう。
“食べちゃいたほど好きなんだもの”と言えば、有名な弁〇様のセリフだが…。
ソ「子供…読み聞かせ…可愛らしい声…弁〇様…」
極「ここはお兄ちゃんが頑張るところなんだからね、しっかり腹を据えておきなさい。そうして、桜ヶ池に波風立ててね、うんと立ててね」
ソ「…あっ!!分かった!!」
朗読劇。
絵本を作るだけではなく、朗読して物語の世界を目と耳で体感もらおうというイベント。
落ち着いた雰囲気の中で、情景や場面を想像させる魅力ある声。
弁〇様を演じられた能登麻美子さんしかいない。
ソ「ありがとう、おばあちゃん。助かったよ!」
極「いいのよ。雨もやんだし、そろそろいかなきゃ」
ソ「最後に一ついい?有頂〇家族の第三部はいつ出るんだろう?」
極「わたしが言いたいのはそんだけ。おしまい。zzz」
後日
ソ「長老!考えつきましたよ!能登麻美子さんにお願いして、朗読劇はどうでしょう?」
長「ワシが考えてた案とまったく一緒ではないか!!さては、盗んだな!!」
ソ「えっ…いや、盗んでませんよ!自分で考えたんです!」
長「…本当に?」
ソ「…ちょっとだけ、ある人から助言は受けましたけど」
長「それ、白くてモフモフのタヌキじゃなくて?」
ソ「っ!!」
長「やはり…ワシも同じことを言われた」
ソ「長老も助言を受けてるじゃないですか!!自分のこと言えませんよ」
長「むむ…このことは我々だけの秘密にしておこう」
ソ「じゃあ、“見習い”外してもいいですか?」
長「…よかろう」
こうして、無事に長老の試練を突破した私は、晴れて“見習い勇者”改め、“勇者ソーマ”として生まれ変わることになった。
ソ「ちなみに、有頂〇家族の第三部はいつ出るか教えてもらいました?」
長「ああ。どうやら第三部の成否は弁○様の復活にかかっておるらしい。能登麻美子さんにストレートに訊けばよかろう。ただし、君がな」
こうして、同じ極毛玉のおばあちゃんから助言をもらった我々は、
目標を達成した暁には能登麻美子さんによる朗読劇を開催する企画を発表した。
その効果もあり、クラウドファンディングは現時点で116万まで急増。
残り5日で目標の150万を越えれるか!?
最後の追い込み!こちらからお願い致します!
https://readyfor.jp/projects/sakuragaike-familia
次回
梅雨に突入した桜ヶ池。
夏になる前に整備マップを完成させるべく、勇者達は頭をひねる。